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人工軽量骨材について

3 木造建築物の床に軽量コンクリート採用

 木造2〜3階建て共同住宅の上下階界床に、「遮音性能を高めつつ、木造として自重をできるだけ小さくする」という目的で、軽量コンクリート(比重1.85)が採用されたユニークな例を紹介する。
 株式会社 市浦ハウジング&プランニングと株式会社 織本構造設計とは、1995年、筋違や耐力壁が不用という木質ラーメン構造 [ RH構法 ]の実用化に成功したのを機に、株式会社 アールエイチエス技術研究所を設立し、本構法の普及を推進している。
 同社によると、木材は元来、暖かみ、柔らかさ、潤い、自然らしさ等を有した環境に優しい建築材料であることから、近年木造建築の 「空間の豊かさ」 が見直されつつあり、低層の共同住宅においてもこれまでの鉄筋コンクリート造に対して、より人に優しい居住環境を提供できるものとして注目されているという。
[ RH構法 (Reinforced Heavy-Timber Structure System)] は、柱 ・梁部材に構造用単板積層材:LVL(Laminated Veneer Lumber)を使用し、柱 ・梁の接合部に穿孔して異形鉄筋を挿入したうえ、エポキシ系接着剤を孔の空隙部に充填・硬化させることによって接合部を剛接合する「鉄筋拘束接合による木質ラーメン構法 」。

LVL は積層材のため、下記のような利点が有るという。
自由な断面や寸法の部材が造れ,材質にバラツキが無く強度も安定。
木材は引火後表面が炭化することによって内部を火災から守るという特質があるため、大断面の構造部材とすることにより、一定の耐火性能を持たせることが可能である。
化学的処理により改質された積層材のため、曲がりや反りが少なく、割れやねじれが生じにくい。

RH構法におけるジョイントシステム
このようなLVLの利点を活かして実用化されたRH構法には、次の様な特長があるという。
ジョイント部が非常にシンプルであることやRC造に比べ自重が軽いことから、重機使用費や基礎工事費を含め躯体工事費の節減が図れる。
構造部材の耐力が大きいため、上下階界床をコンクリートスラブにでき、共同住宅には不可欠とされる「床の遮音性能」を高めることができる。
筋違や耐力壁は要らないので、プランの自由度が高く、大きな開口も自由に計画ができる。
現場継ぎによる長スパン梁の製作が可能なため、大空間構造を創りだせる。
木材は、コンクリートや金属等の材料に比べて熱伝導率が格段に低いため高い断熱性能が得られ、さらに木造の場合、RC造のように結露で悩まされる心配もない。

説明図2

 このような特長を持つRH構法は、建築基準法の規制による木造として建築可能な規模においては、あらゆる用途の木造建築に適応可能で、共同住宅、体育館、図書館、病院、集会施設等々、幅広い用途の建築物に採用実績がある。また、RH構法の技術を構造用集成材や製材に用い、ピン構造の高い構造性能を持つ躯体システムーAKジョイントーを開発した。さらに、スギ構造用集成材を用いたラーメン構造の躯体システムースギRH構法ーも開発済みである。「木造共同住宅の上下階界床に軽量コンクリートが採用された物件」について(表ー1)に示し、その中から群馬県高崎市の金井淵県営住宅を紹介する。

(表-1):木造共同住宅の上下階界床に軽量コンクリート採用の物件リスト

物件名称 発注者 場所 竣工年 階数 延床
面積
(m2)
町営丹納第2住宅 ※1 西海町 長崎県西彼杵郡西海町 2001 3 1,005
県営本原団地A群 長崎県 長崎県長崎市本原町 2001 3 2,215
秋田県営手形山住宅(4号棟) 秋田県 秋田県秋田市手形山西町 2002 3 2,895
鬼石町営宮本団地 鬼石町 群馬県多野郡鬼石町 2002 3 934
県営ハイタウン平佐団地(1〜2期)-AKジョイント 鹿児島県 鹿児島県川内市田崎町 02〜
2003
2 1,377
美祢・来福台県営住宅(1〜3号棟)-AKジョイント 山口県 山口県美祢市大嶺町 2003 2 1,427
金井淵市営住宅(1〜3期) ※2 高崎市 群馬県高崎市金井淵 99〜
2003
3 14,693
金井淵県営住宅(1〜2期) 群馬県 群馬県高崎市金井淵 02〜
2004
3 4,527
※1: American Wood Design Awards 2002 ※2:第9回たかさき都市景観賞

●金井淵県営住宅の概要
 豊かなコミュニティ形成と高齢者が安心して暮らせる住まいづくり、地域になじむ景観形成等に配慮した建替団地。
セットバックを生かした広いバルコニー、多様でフレキシビリティーに富む間取りを支える均等ラーメンの架構を生かした外観フレームデザイン、地場産の十能瓦葺き屋根、換気機能を持つ越屋根の活用など、川辺の田園風景、周辺集落と調和する軽快で開放的な町並み景観を形成している。隣接する金井淵市営住宅(196戸)と一体となって豊かで変化のある295戸の町並みが近い将来完成する予定である。3期設計では、スギRH構法を適用し、県産スギを最大限に活用している。

団 地 名(所在地) :金井淵県営住宅
(群馬県高崎市金井淵町137-1 他)
敷 地 面 積 :14,763.09m2
計画棟数(計画戸数) :8棟(99戸)
延 床 面 積 :6,287.76m2

主な外装仕様
○ 柱 ・ 梁 :構造用LVLの上 防火被覆材(杉板)
 45mm木材保護塗装
○ 外 壁 :木製サイジングの上 木材保護塗装
○ 屋 根 :アスファルトルーフィングの上 十能瓦葺
主な構造仕様
○ 基 礎 :鉄筋コンクリート布基礎
○ 柱 ・ 梁 :構造用LVLの上 防火被覆材(杉板)
 45mm
○ 2,3階床 :鉄筋コンクリートスラブ
金井淵県営1期外観
1期ブロック外観

鉄筋コンクリートスラブの仕様 金井淵県営2期外観
2期ブロック外観

株式会社 市浦都市開発建築コンサルタンツ
 http://www.ichiura.co.jp/

株式会社 織本匠構造設計研究所
 http://www.orimoto.co.jp/

株式会社 RHS技術研究所
 http://homepage2.nifty.com/rhs/
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